4 雇用保険 2022.10月から 0.5~0.6%自己負担 0.85~1.05%会社負担


事業所で働くAさんの月収が30万円で、会社が負担する雇用保険料率が0.65%の場合
 1か月あたり:30万円×0.6%=1,800円 自己負担

 1か月あたり:30万円×0.85%=2,550円 会社負担

保険料 4,350円 雇用保険

【雇用保険制度】

労働者の生活や雇用の安定を目的とした給付を行い、再就職の支援を行うことなどを目的とした国の制度。

加入条件や給付、保険料率は雇用保険法等で決められていて、加入基準を満たす場合に加入が必須となる。

【雇用保険の加入条件】

雇用保険が適用される事業所(適用事業主)に雇用されると、季節的に一定期間のみで雇用される場合などを除き次の2つの条件を満たせば加入対象(被保険者)となる。

加入条件1:31日以上継続して雇用される見込みであること

加入条件2:1週間の所定労働時間が20時間以上であること

正社員、契約社員、派遣、パート、アルバイトなどのいずれの雇用形態でも加入条件は同じである。

また、健康保険・税の扶養に入っている場合も、加入条件を満たしていれば雇用保険に加入する必要がある。

雇用保険の被保険者の定義として、一般被保険者・短期雇用特例被保険者・日雇労働被保険者・高年齢被保険者の4つがある。

  • 一般被保険者

「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」「高年齢被保険者」のいずれにも当てはまらない従業員で、基本的には従業員の大多数が一般被保険者である。パートやアルバイトについても一般被保険者に含まれる。

  • 短期雇用特例被保険者

毎年特定の季節に雇用したり、短期間の雇用に就いたりする従業員。1年以上の雇用期間が継続した場合には一般被保険者となる。

  • 日雇労働被保険者

30日以内の雇用期間を定めている従業員や、日ごとに雇われる従業員。ただし、連続する2ヵ月間で18日以上雇用される場合や、31日以上連続して雇用する場合には、翌月の初日から一般被保険者や短期雇用特例被保険者となる。

  • 高年齢被保険者

65歳以上の被保険者のうち、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者に該当しない従業員。

法人の取締役、家事使用人、学生、法人の代表者や個人事業主と同居する親族は被保険者に該当しない。

【雇用保険の保険料金】

雇用保険の保険料金は会社と労働者の双方が負担する。

被保険者が負担する雇用保険料は毎月の賃金や賞与に雇用保険料率をかけた金額で、会社(事業主)が毎月の賃金(給与)から控除して徴収する。

一般の事業に該当する会社の雇用保険料率は0.9%。このうち0.6%を会社が負担して、0.3%を社員が負担します。つまり月の給与が20万円、残業代が3万円だった場合、(200,000+30,000)×0.3%=690円が雇用保険料です。

【雇用保険で受けられる給付内容】

代表的なものとして、失業手当(基本手当)・技能習得手当・就業促進手当・教育訓練給付金・育児休業給付金・介護休業給付金・高年齢雇用継続給付金がある。

  • 失業保険(基本手当)

基本手当とは、雇用保険に加入している被保険者が定年や倒産、契約期間の終了等の理由により離職した場合に、失業中の生活の安定を図りつつ、1日も早く再就職するための求職活動を容易にすることを目的に支給されるもの。

[受給要件]

  1. ハローワークで求職の申し込みを行い、働く意思と能力はあるが就職できない「失業している状態」にあること
  2. 退職した日以前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算で12カ月以上あること。

ただし、有期労働契約が更新されないことでやむを得ず離職した場合や、解雇等により離職した場合は離職の日以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給資格が得られる。

[給付額]

基本手当の1日当たりの給付額を「基本手当日額」と呼び、「基本日額」に「給付率」をかけて計算される。

「基本日額」は、離職日以前の6ヶ月間に支払われた賃金総額を180で割ったもの。

※この賃金総額には通勤手当や残業手当などの各種手当は含むが、賞与や退職金は除かれる。

また、「賃金日額」には下限額と、年齢区分に応じた上限額も設定されている。

基本手当日額が受け取れる日数(所定給付日数)は離職理由と被保険者期間(算定基礎期間)、年齢区分ごとに定められている。

離職理由・被保険者期間によって90日~最大360日となる。

※「算定基礎期間」は過去に基本手当等に相当する雇用保険からの給付を受けたことがなければ、それぞれの期間を通算することができるが、1年を超えて被保険者期間に空白がある場合は、その前の期間は含まれない。

[自己都合により退職した場合の所定給付日数]

自己都合により退職した場合は、退職した年齢にかかわらず、雇用保険被保険者であった期間により所定給付日数が決定する。

[特定受給資格者及び特定理由離職者の所定給付日数]

会社の倒産や事業所の廃止など、会社の都合により退職した場合は、特定受給資格者となる。

また、体力不足や疾病、負傷により離職した人、事業所の移転により通勤不可能または困難など、正当な理由による自己都合で退職した場合は、特定理由離職者となる。

この特定受給資格者、または、特定理由離職者の場合は、被保険者であった期間と退職時の年齢で所定給付日数が決定される。

[申請方法]

会社から「離職票」が送られてきたら、住所地を管轄するハローワークに行き、求職の申込みをする。

ハローワークは受給資格を満たすと認めた者に対して、失業認定日を定め受給資格者証を交付する

原則として4週間に1回失業認定日にハローワークに行き、失業の認定を受ける。

失業認定を受けた日数について基本手当が振り込まれる。

  • 技能習得手当

受給資格者が再就職のためにハローワークの指示を受け、職業訓練(公共職業訓練)を受ける場合に支給される手当で、「受講手当」と「通所手当」の2つがある。

受講手当は基本手当がもらえる期間内で職業訓練を受けた日にもらえる手当で、支給額は日額500円である。しかし、訓練を受けた日数分だけ無制限にもらえるわけではなく、上限額は20,000円(40日分)に設定されている。

通所手当は、基本手当をもらいながら職業訓練を受ける人が、訓練を行う施設に通うために車や電車、バスなどを利用した場合に支給される。上限額は月額42,500円。

  • 就業促進手当

失業手当の所定給付日数を一定日数以上残して就職した場合に支給される手当で、「再就職手当」「就業手当」「就業促進定着手当」「常用就職支度手当」の4つがある。

[再就職手当]

「1年を超えて引続き雇用される職業に就き、基本手当の支給残日数が1/3以上あることで支給される。

支給額は基本手当日額×支給残日数×給付率で求め、給付率は支給残日数が1/3以上2/3未満である場合は60%、2/3以上の場合は70%となる。

[就業手当]

再就職手当の支給要件に該当しない職業に就き、基本手当の支給残日数が1/3以上かつ45日以上であることで支給される。

支給額は、就業した各日につき基本手当日額の30%。

[就業促進定着手当]

再就職手当を受け、再就職先で6ヶ月以上の雇用保険の被保険者であり、6ヶ月間の賃金額が離職前の賃金額を下回っている場合に支給される。

[常用就職支度手当]

身体障害者など就職が困難な者が安定した職業に就いた場合に支給される。

  • 教育訓練給付金

雇用保険の被保険者または一定の要件を満たす被保険者であった者が指定の教育訓練を受けた場合に、費用の一部が支給される。

一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金の3種類がある。

[一般教育訓練給付金]

受講開始日時点で雇用保険の被保険者であった期間が3年以上(初めての支給の場合は1年以上)ある者や、前回の教育訓練給付金の受給から3年以上経過している者が対象となる給付金。

仕事に役立つスキルや、資格がおおむね1年以内に身につく講座が対象となっており、語学、簿記、医療・福祉、ICT(情報通信技術)、建築など、幅広い分野の講座が指定されている。

支給額は、教育訓練経費の20%相当額で、上限は10万円。ただし、4,000円を超えない5場合は支給されない。支給期間は最長で1年間です。

[専門実践教育訓練給付金]

専門実践教育訓練給付金とは、業務独占資格、名称独占資格の取得を目標とする講座、専門学校の職業実践専門過程、専門職大学院などの中長期的なキャリア形成を支援する厚生労働大臣指定の講座を受けた場合に支給される給付金。

指定講座は、国家資格(看護師、社会福祉士、柔道整復師など)や、一定レベル以上のITスキルに関する資格の取得を目指す講座などがあり、大学・大学院などの職業実践力育成プログラム(文部科学大臣が認定するプログラム)、専門職大学院の課程(MBA、法科大学院、教職大学院など)といった、社会人向けの実践的な講座も指定されている。

受講開始日時点で雇用保険の被保険者であった期間が3年以上(初めての支給の場合は2年以上)ある者や、 前回の教育訓練給付金の受給から3年以上経過している者が対象となる。

支給額は、教育訓練経費の50%相当額で、年間上限は40万円、通算120万円が上限となる。ただし4,000円を超えない場合は支給されない。

資格取得が就職に結びついた場合は、教育訓練経費の20%相当額の追加支給がある。

支給期間は原則2年だが、資格につながる場合は最長3年となる。

[特定一般教育訓練給付金]

受講開始日時点で雇用保険の被保険者であった期間が3年以上(初めての支給の場合は1年以上)ある者や、前回の教育訓練給付金の受給から3年以上経過している者が対象となる給付金。

対象の講座は一般教育訓練給付金と同じく、おおむね1年以内に資格やスキルが身につく講座だが、業務独占資格である行政書士や税理士をはじめ、宅建士や中小企業診断士など専門的な国家資格の取得を目標とする講座や、ニーズが高く就職に強い医療や社会福祉関係など、社会的にニーズが高い職種の人材を短期間で養成する講座や、早期の再就職・キャリア形成につながりやすい講座が指定されている。

支給額は、教育訓練経費の40%。ただし、支給額の上限は20万円とし、4,000円を超えない場合は支給されない。

  • 育児休業給付金

育児休業給付金とは、育児休業を取得する被保険者が下記の受給資格を満たすと支給を受けることができる給付金。

条件を満たせばパートや契約社員として働いている人でも育児休業給付金の支給対象者になる。

[受給資格要件]

・雇用保険に加入している被保険者

・1歳未満の子どもがいる

・産休前の2年間で、1ヶ月に11日以上働いた月が12ヶ月以上ある

・育休期間中の1ヶ月あたり、休業開始前の1ヶ月の賃金の80%以上が支払われていない

こと

・育休期間中に就業している日数が1ヶ月あたり10日以下であること

これまでの制度では、同一の子についての2回目以降の育児休業は、原則として育児休業給付金の支給対象にならなかったが、2022年10月から1歳未満の子どもがいる場合、原則2回の育児休業まで育児休業給付金を受給できるようになった。

また、産後パパ育休(出生時育児休業)制度が創設され、育児休業とは別に子の出生後8週間以内に4週間まで、産後パパ育休を取得できるようになった。この産後パパ育休も育児休業給付金の対象となる。

育児休業給付金の金額は、下記のとおりとなる。

育児休業開始日から6ヶ月間:休業開始時の賃金日額 × 支給日数×67%

育児休業開始日から6ヶ月経過後:休業開始時の賃金日額 × 支給日数×50%

休業開始時の賃金日額とは、休業開始前6ヵ月の賃金を180で割った金額で、支給日数とは、原則として1ヵ月あたり30日(休業終了する月は終了日までの日数)。

ただし、賃金月額の上限額は45万600円、下限額は7万7,310円です。賃金日額×支給日数が上限および下限の範囲を上回る(あるいは下回る)場合は、上限(あるいは下限)の金額となる。

育児休業給付金を受け取れるのは、育児休業期間中のみとなる。

育児休業期間は、出産後8週間の産後休業経過後から、父親が取得する場合は出産日(出産が遅れたときは出産予定日)から子供が1歳になるまで。

ただし、保育園の利用を希望しても見つからない場合など、一定の要件を満たすときは、最長2歳になるまで育児休業を延長し、育児休業給付金を受け取ることが可能。

  • 介護休業給付金

介護休業給付金はご家族が怪我や病気等により介護を必要としている場合に、介護を行うために休んだ際に(介護休業)申請をすることでもらえる給付金。

介護休業給付金を受給するためには、労働者と被介護者、介護日数・回数の3つにおいて条件を満たしていることが必要となる。

まず受給者は雇用保険に加入し、休業開始日までの2年間のうち、11日以上働いた月が12か月以上ある方で、なおかつ同じ事業主の元で1年以上継続して雇用されている方が対象で、介護休業終了後に離職を予定している方は、受給の対象外となる。

対象家族となる被介護者は労働者の配偶者か父母、義父母、子、兄弟姉妹、祖父母、孫のいずれかで、2週間以上の常時介護が必要な状態の方である。

1回の介護休業は3か月までで、被介護者1人に対して93日以内かつ3回以内と定められている。

[介護休業給付金 支給額]

介護休業開始前時賃金×支給日数(休業日数)×67%で計算する。

介護休業開始前時賃金は、介護休業開始前6カ月の合計賃金を180で割った金額。

支給限度額が、335,067円である。

受給申請は、介護休業終了日の翌日から2か月後の月末までに申請が必要となり、支給決定後、約1週間程度で支払われる。

介護休業期間中、在職中の事業所・それ以外を問わず1か月のうちに10日以上就労した場合支給対象とならない。

また、日数が10日以内であっても賃金が8割を超えた場合、給付対象外となる。

休業期間が1か月未満の場合、就業日数が10日以下かつ、全日休業している日(日曜・祭日含む)が1日以上あることも必要となる。

  • 高年齢雇用継続給付金

60歳以上65歳未満の従業員に支給される給付金。高年齢雇用継続給付金は、従業員の60歳到達時点とそれ以降の収入を比較し、60歳到達時点の75%未満となっていた場合に支給される。

高年齢雇用継続給付金には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類がある。

[高年齢雇用継続基本給付金]

60歳以降、失業保険による基本手当や再就職手当を受け取っていない従業員を対象とした給付金。具体的には、60歳で定年退職した後、ブランクなく同一企業で再雇用された従業員などが該当する。

支給対象者となるには、失業保険による基本手当や再就職手当を受給していない、60歳時点と60歳以降の賃金を比較した際に、75%未満に低下している、60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者である、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある(60歳以前の通算)の条件を満たす必要がある。

仮に賃金が60歳時点の75%未満ではない従業員でも、65歳までのあいだに75%未満に低下することがあれば、その時点から支給対象となる。

支給期間は、60歳になった月から65歳になる月までである。

[支給額]

高年齢雇用継続給付金の支給額は、ひと月ごとの「賃金の低下率」に応じて算出する仕組みであり、低下率とは、60歳到達時点の賃金と現在の賃金にどの程度の差があるかを示したものである。

<賃金の低下率の計算式>

低下率=支給対象月の賃金額(現在の賃金額)÷60歳到達前の6ヵ月間の平均賃金額

×100

支給対象月に支払いを受けた賃金の額が支給限度額(360,584円)以上であるときには、高年齢雇用継続給付は支給されない。

また、最低限度額が2,061円とされており、高年齢雇用継続給付として算定された額がこの額を超えない場合は、支給されない。

支給額は以下の計算式で計算される。

支給額=支給対象月に実際に支払われた賃金額×支給率×100分の1

[高年齢再就職給付金]

雇用保険の失業手当を受給していた方が、60歳以降に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金と前職の賃金(離職時賃金日額×30日)とを比較して、再就職後の各月に支払われる賃金(給与)が75%未満に低下した場合に支給される給付金。

雇用保険の加入期間(被保険者期間)が5年以上ある、60歳以上~65歳未満で再就職をした、安定した職業に就いた(1年以上雇用されることが確実である)、再就職する前に失業手当を受給し、その受給期間内に再就職して、かつ支給残日数が100日以上ある、再就職する前に再就職手当を受給していない、という条件を満たす必要がある。

支給期間は、失業手当の残日数が再就職した日の前日からカウントして200日以上の場合は、再就職した日の翌日から2年を経過する月までとなる。

失業手当の残日数が再就職した日の前日からカウントして100日以上200日未満の場合は、再就職した日の翌日から1年を経過する月まで。

ただし、支給期間中に65歳になった場合は、支給期間が残っていたとしても65歳に到達した月までで支給は終了となる。

[支給額]

「前職の賃金」と「再就職後の賃金」を比較し、どれぐらい減ったかの割合によって決まる。

前職の賃金月額→低下率→支給額の順に計算する。

前職の賃金月額=離職時賃金日額×30日

前職の賃金月額には上限・下限がある。上限額:478,500円、下限額:79,710円。

低下率(%)=再就職後の賃金÷前職の賃金月額×100

低下率が61%以下になった場合→支給額=「60歳以降の賃金」×15%

低下率が61%以上~75%未満になった場合

→支給額=(-183÷280×「再就職後の賃金」)+(137.25÷280×「前職の賃金月額」)

低下率が75%以上になった場合→支給無し

※下記早見表を使用して計算する場合は、支給額=「再就職後の賃金」×支給率で計算。

支給額には上限・下限があり、支給額上限:364,595円、支給額下限:2,125円。

再就職後の賃金と支給額の合計が364,595円を超える場合は、再就職後の賃金から364,595円を差し引いた額が支給される。

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